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変身 (東野圭吾) : ウィキペディア日本語版
変身 (東野圭吾)[へんしん]

変身』(へんしん)は、東野圭吾による書き下ろしサスペンス小説。脳移植により自分の人格が失われていく恐怖と葛藤を描く。
2014年3月現在、発行部数は125万部を超えている。また新井素子は、『パラレルワールド・ラブストーリー』の文庫本巻末に収録された解説の中で、この作品と『分身』『パラレルワールド・ラブストーリー』を合わせて『東野“私”三部作』と命名している。
本作を原作に2005年に映画化された。また、間瀬元朗画によって「週刊ヤングサンデー」に『HE∀DS』というタイトルで漫画が連載された。
2014年7月にはWOWOWテレビドラマ化された。
== ストーリー ==
成瀬純一が目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋のベッドの上だった。思い出せるのは拳銃で撃たれたことと、純一という名前のみ。脳神経外科の権威だという堂元教授に聞くところによると、奇蹟的に命をとりとめたが、3週間も昏睡状態だったのだという。回復するにつれ、次第に自分は不動産屋で強盗に遭遇し、その場にいた女の子をかばって撃たれたのだという記憶がよみがえってきたが、鏡に映る自分の顔が一瞬わからない、嗜好品の好みが変わるなど、昨日までの自分と感性ががらりと変わってしまったような奇妙な感覚に戸惑いを感じるようになる。ある夜、病院内の研究棟とはいえ、シャッターが閉められてあちこちに鍵がかけられた様子に疑問を抱いた純一は、夜中に忍び込んだ部屋で自分のものと思われる脳が入ったガラスの容器を発見してしまう。そして堂元を問い詰め、自分が幸運にも10万分の1の確率だといわれる適合者が見つかったために、世界初の成人脳移植手術を受けたということを知る。ドナーについても問いただすが、それについては「詮索すべきではない」と決して教えてくれなかった。検査をただひたすら受ける日々が続いたが、面会OKの許可が出ると、強盗事件を担当する刑事の倉田謙三がやって来る。そこで純一は初めて事件についてや犯人・京極瞬介の人となりを聞き、結局京極は自殺したのだということを知る。
退院し、自分の家に戻るとそこには恋人・葉村恵の姿があった。喜びを噛みしめる純一だったが、恵を抱いた時にふと「なぜそばかすなんてものがあるんだろう?」と、彼女について残念に思う気持ちが沸き起こる。その他にも違和感を感じることは次第に増えていく。一緒に仕事をしている人間が無能としか思えず失望する。今までのような絵が全く描けなくなり、聴覚が異様に鋭くなった。そして何より、恵といても全く楽しいと思えない―。職場の先輩と喧嘩をして酒瓶で殴ろうとしたり、隣人の言動に殺意を抱いてナイフを持ち出したりと、どう考えても異常だと感じた純一は、堂元教授にこれは副作用ではないのかと疑問をぶつけるが、堂元教授は「まず起こりえない」と取り合わなかった。しかし腑に落ちない純一は、博士が少し席をはずした隙にドナー・関谷時雄の情報を手に入れ、時雄の父・関谷明夫の元を訪ねる。そこで聞いた時雄の生前の性格や嗜好の話は、純一に新たな疑いを抱かせた。あまりにも今の自分と違いすぎる……そして”父”である明夫に会っても特に何も感じない……ドナーは別の人間なのではないだろうか?
今の自分の性格や行動パターンは、ドナーだと言われている時雄よりもむしろ犯人の京極の方に近い。そう考えた純一は倉田刑事から京極の妹のことを聞き出し、ついに京極亮子との対面を果たす。予感はしていたが、実際に目があった瞬間に全身が硬直した自分に驚く。確信した純一が堂元を問い詰めると、ようやく堂元はドナーが時雄ではなく京極である事実を認めた。症状の改善に全力で取り組むという堂元を殴って拒否した純一だったが、変わらず自分を心配してくれる堂元の助手・橘直子とは交流を断ち切らずにいた。そして初めて堂元以外の医者の診察を受け、成瀬純一本来の右脳意識が消滅しつつあることを悟った純一は、これも京極に支配されている行動かもしれないと感じつつも直子を初めて抱き、彼女を信用してもいいかもしれないと思い始める。しかし自分が留守の間に日記をコピーして内容を誰かに報告している直子の姿を見た純一は彼女の首を絞めて殺し、屍姦。一方、純一の裏の家で飼われている番犬が殺され、ノコギリで切断されたというニュースを見て、もしかしてと感じた恵は純一の部屋に戻っていた。殺人を告白され、迷惑がかかるから帰れと言う純一に「愛しているから」と食い下がり、恵はどんなに冷たくされても二度と純一のそばを離れまいと決意する。再び2人で過ごす時間が増え、純一は恵の裸体だけは再び描けるようになっていった。
時が過ぎ、純一の意識がほとんど消滅して恵の名前もわからなくなった頃、純一は脳移植手術の研究を順調に進めたい何者かに拉致され、焼き殺されかける。恵が裏切ったせいだと考えた純一は恵を殺しかけるが、寸でのところで自分を取り戻し、堂元の研究所へと赴く。そして移植した部分を再び取り除いてほしいと頼むが、首を縦に振らない堂元を見て、途中で警官から奪ってきた銃で自分の右側頭部を撃ち抜いた。堂元が手術して再び命は取り留めたものの、純一は無意識の世界に生きる人となる。恵は純一が生前に描いていた絵を売って延命費にあてながら純一に添い続けるが、きちんとそばかすまで描いてくれた最後の絵だけは売らずに手元に残していた。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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